北嶋研究部員の「教師が育つということ」3— 春の研究集会2026報告
春の研究集会2026の第3部では、沖縄の小学校教員である宮城健太さんが登壇し、「違
いを認め合い、得意を生かす学びづくり」をテーマに実践を語ってくれました。
宮城さんと私は、日生連の若手世代が集う「ぼちぼちいこか若手研究会」(ぼちぼちの
会)の仲間です。2025年4月研究会では、「地域のみりょく探検たい!」の実践を報告し
てもらい、『生活教育』連載の「先生の相談室」(2026年2/3月号所収)でも回答者とし
て共演を果たしました。
教師としての歩みにも共通点が多く、私自身、宮城さんのことを勝手ながら同志のよう
に感じています。なお、宮城さんの報告は、『生活教育』2026年8/9月号に収められてい
ます。
●教師の苦しみ、子どもの必然性とは
地域には、琉球王国時代の記憶を伝える世界遺産「中城城跡」があり、3年生の子ども
たちは総合学習として、城跡を管理する方々と出会います。石積みや井戸の仕組みの再現
に没頭していく子どもたちの姿が描かれた実践報告でした。
今回の報告の特徴は、自分の思いや考えを言葉で表すことが極端に苦手な一人の男の子
に焦点を当てて実践が綴られている点にあります。昨年度の申し送りでも、文章表現の苦
手さがすでに指摘されていました。そこで宮城さんは、4月から、さまざまな授業の中で
「自分の考えを書く時間」を意図的に設けていきます。
しかしながら、男の子はなかなか書く出すことができません。宮城さんもすぐに寄り添
い、問いかけながら背中を押していきます。当時のことを宮城さんは次のように振り返っ
ています。
「とにかく何でもいいから書かせて、書いたら褒めるということを繰り返し、書くこと
への苦手意識を取り除こうと思っていた。」
その意図は残念ながら男の子には届きません。次第に彼はまったく書かなくなり、注意
する場面が増えていきます。宮城さん自身も、文章を書かせる指導ばかりしていたことに
気づいていきます。
この場面を綴った小見出しに、宮城さんの苦しみが端的に表れています。「一番苦手な
ことを克服させたい~教師のエゴ?~」。教師が「自分がなんとかしなければ」「自分が
指導すれば変わるはずだ」と思い込んだ瞬間、子どもは教師のもとから離れていきます。
そこには、宮城さんの働きかけに対して、彼には一つとして応答する必然性がなかったこ
とが浮かび上がります。
裏を返せば、子どもにとって必然性のある、自然と学びたくなるようなことからしか、
学びの旅は始まらないとも言えるでしょう。私も宮城さんと同じような苦しみを経験し、
そのたびにこの教育関係の原点に立ち返ってきました。
●好きなことを追究していく時間 ——授業への認識を変えること
宮城さんの優れたところは、6月から、男の子が大好きなキノボリトカゲについて調べ
ることができるように、国語の「引用」の学習を大胆に再構成し、「生き物の飼い方ポス
ター」づくりにつながる授業を展開しているところです。ちょうど同じ時期に、学級でカ
メを飼育するという出来事があり、宮城さんはこの偶然を逃さず、子どもの興味や関係す
る出来事をうまく重ねて合わせて、学級全体の学習へと広げています。
さらに踏み込んでみると、男の子にとって、これまで苦痛でしかなかった“書くことを指
導される国語の時間”が、“大好きなキノボリトカゲを調べられる場”へと変わったことは、授業そのものへの認識が大きく変容した瞬間だったと言えるのではないでしょうか。「苦手を克服する時間」から「好きなことを追究していく時間」——その転換が、彼の心を動
かしたのだと考えます。
そして、その過程で、宮城さんはごく自然に「引用」の仕方を助言しています。学ぶことと教えることが重なり、子どもにとって必然性のある学習へと立ち上がっていることが
分かります。
●『あなた』と『わたし』 ——二人の関係から始まる
実践報告の後半は、中城城跡を材にした総合学習が描かれています。中城城跡では、現
在も城壁の修復作業が続けられており、石積みの城壁づくりから井戸づくりへとプロジェ
クト学習を進めてきた男の子は、学習発表会の作文をいち早く仕上げることができました
。書くことが苦手だった彼にとって、宮城さんも価値づけている通り、これは大きな成長
といってよいでしょう。
冒頭に触れたとおり、一年前、宮城さんは「地域のみりょく探検たい!」と題したレポ
ートを報告しています。そのときは、中城漁協の漁師さんに出会い、アーサ(あおさ)を
材にした総合学習を展開していました。地域に生きる人、その世界を楽しみながら生きている人と出会い、宮城さん自身も子どもと共に学び続ける人として授業をつくっていく姿勢は、ふたつの実践とも共通しています。
大きく異なるのは、一人の男の子がこの実践の中心にいたことでしょう。これは、担任
一人に対して、子ども多数(集団)という捉え方では決して綴ることができない報告です
。その男の子と宮城健太さん——『あなた』と『わたし』という二人の関係があるからこ
そ、成立する記述だと考えています。レポートでは詳細に触れられていませんが、前年度
から続くトラブルや、プロジェクトで活躍する女の子の姿も描かれており、宮城さんがそ
うした子どもたち一人ひとりとも丁寧に関わってきたことが推察できます。
だとすると、教師は、『あなた』と『わたし』という小さな関係を、子どもの数だけ丁
寧につくっていくことで、実践が始まり、豊かに変わっていくのではないでしょうか。宮
城さんの実践は、そのことを静かに示唆していると感じています。


※写真は、宮城さんの実践から「井戸づくりプロジェクトで子どもたちが制作している井
戸」と「中城城城壁の修復作業の様子」を掲載しています。
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3回にわたって、春の研究集会2026を振り返ってきました。この集会は当初、第1部か
ら第3部それぞれ独立して企画されたものでしたが、「教師が育つ」という視点から見直
してみると、全体がひとつの流れとして結びついていたことに気づきました。私自身にと
っても、研究を進めていくうえで大切にしたいテーマが見つかり、その意味でも心に残る
集会になりました。
8月8日・9日は、沖縄大会2026の予定でしたが、台風の影響で延期となりました。9月19日・20日に開催されます。現地沖縄実行委員会の皆さんのご尽力に心から感謝しています。沖縄での研究集会から大いに学び、仲間とつながりながら、教師としてさらに育っていく機会にしたいです。

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